里親支援

里親支援 とセラプレイ(Theraplay@)
 セラプレイは、米国シカゴで1960年代に生まれたアタッチメント理論を背景に持つ関係性の新療法の一つとして登場してきました。当時の時代背景は、シカゴの子どもたちがクラスの中で適応できず、外に出て行ってしまったり、ブロックでお友達をたたいてしまったり、寝転がってしまうなどの様々な環境から様々な子どもの「教室での不適応」が深刻な問題となっていました。当時ヘッドスタートプログラムという米国政府が掲げた支援のプロジェクトの一つとして、セラプレイが選ばれることになりました。
セラプレイは、心理学者であるAnn Jernberg博士と Phyllis Booth先生という子どもの現場の先生が出合い開発され、政府が行ったヘッドスタートプログラムに採択されたことで広く成果が認められ広まっていきました。当時は保育者、心理学部の大学院生たちが、セラプレイの教育を受け多くの学校に配置されました。比較的短時間で“問題児”と言われていた子どもが、クラスの子どもたちと仲良く遊ぶようになり、ケーキを分け合ったり、外で楽しく遊ぶ姿が見られ、その様子は長期間にわたる観察研究が映画となっており、当事者の子どもが大きくなるまでの経過が白黒の映画ではありますが残っています。
欧米と日本の違いは、広大な国土と小さな島国と見た目もさることながら文化も全く異なります。それを踏まえた上で、話を進めていきたいと思います。そんなアメリカでは、ADOPTION(里親)文化が早くから浸透し、様々な政策や支援がなされてきました。社会の問題や、家族の問題など、日本と全く異なる文化の中で里親制度を支援する方法として、その後アメリカでまず浸透したのもセラプレイだったのです。新たな親子になった親子を遊びを通して、「出会う環境」を提供しながら、目に見える「出会い」から、目に見えない「つながり」にかかわっていくものです。
アメリカでは、現在多くの里子はロシアや、中国など全く異なる文化からやってくる子どもたちも数多くいます。そんな中で、別の国で一体どのような施設や、家庭環境で育ってきたのかわからない状況で、全く違う言葉を話す国に連れてこられるところからスタートすることも多いのです。地域にセラプレイのセラピストがいる場合は、セラピー自体は当然長期に渡り、問題があるなしにかかわらず、お互いを理解するための時間が組まれます。薬が必要なケースもあります。その都度、病院や別のセラプレイに連携させる場合もありますが、どのような家族においてもセラプレイが、まずは第一段階として最適であるという結果が出ています。まずは「相手を知り、自分を知りながら、信頼関係を築いていくことが結果的に関係性を新たに作ったり、修復しるという愛着理論の考え方に基づいているからです。」それから、行動修正や、トラウマの治療など、しっかりとした支えを得てから、“治療”の段階が必要な家族は入っていきます。もちろん、その段階が必要のない家族で、セラピストが近くにいない場合は、短時間で里親さんへの「ペアレンティング」にフォーカスをする場合もあります。
フィンランドの SOS子どもの村では、セラプレイが一位早く導入され、一人のセラピストが雇われ多くの子どもたちと家族が出会い、セラプレイでつながることができました。現在でもセラプレイは様々な形で根付いており、妊娠期から高齢者に至るまで、30人を超えるセラプレイの専門家たちが各地域で活動をし、今ではヨーロッパのリーダーとして学会を開催しています。来年はフィンランドセラプレイ協会20周年となります。SOSでの活動は、セラプレイを行ったことにより親子関係の関係性の向上と持続、社会性の向上など肯定的な結果が論文として発表されています。(米国本部のHPでダウンロード可能)
さて、日本ではまだ里親のプログラムとしての実施は公のプロジェクトとしては行われていませんが、カウンセリングセンターや、児童養護施設などで少しずつ使われてきています。以前より、里親支援の専門家や、実際に里親さんたちにセラプレイをご紹介させていただいたことはありますが、セラプレイの専門家教育としてこれから始まろうとしているところです。
日本での「里親支援セラプレイプロジェクト」が立ち上がり、ぜひ日本の一つの形として定着していくことを望んでいます。そのためには長期に渡って親子が相談できる環境を作り、親子が安心して二人で来られる場でセラプレイを提供し、結果的に親子それぞれがしっかりと立ち、手をつなぎ歩いていくことができるようにすることが、私たちの支援が必要ではなくなることが目的であると思っています。新しいものが定着するには、子どもだけでなく、親にも、そして支援者にも 安心できる場が必要なのです。今ある場所に、セラプレイがそっと入れていただければ嬉しいな、ちょっとした隙間ができればいいな、と思っています。そのために、今までセラプレイを様々な場所で経験してきた私だからできることが、あるのではないかと思っています。講演などを通して、現場の先生方が、試行錯誤で自分なりに努力してやっていらっしゃることが、苦しいほどよくわかるので、ぜひセラプレイというしっかりとした理論背景のあるものでそこ固めて、皆さんと一緒に勉強しながら日本に定着させるための研究を進め、親子の声を一緒に聞いていきましょう。先生方の努力と熱意がもっともっと親子がつながるるための一つの形として定着するための応援させてください。